アレルギー症状の予防・改善

アレルギーに対するヨーグルトの効果は現在でこそ多くの人々に認識されていますが、この関係が発見されたのは比較的最近のことです。

2000年を過ぎた辺りから、ヨーグルトがアレルギー症状の予防や改善に効果的であると言われ始め、そこから急速に両者の関係に関する研究が盛んに行われてきました。

アレルギーは複数の要因が重なって起きることが多く、また発症の仕組みも複雑なため、ヨーグルトがどのようにアレルギー症状を予防・改善するのかは完全には解明できていません。

しかし、数々の研究からヨーグルトの及ぼす作用が確認されてきており、効果の程度はあるもののヨーグルトがアレルギーに効果的なのはほぼ間違い無いと認識されるようになっています。

ここではそのヨーグルトがアレルギーに及ぼす効果をまとめてご紹介しています。ご興味があればご覧ください。

尚、アレルギーにはいくつか種類があり、ウィルス性肝炎や関節リウマチなどもアレルギーの一種とされますが、ここでは花粉症や喘息、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎などいわゆるIgE抗体に起因するI型アレルギーを対象としています。

アレルギーとは?

今どきアレルギーのことを知らない人はいないでしょうが、仕組みを理解している人はそれ程多くはないのではないでしょうか?

仕組みを簡潔に言うと、アレルギーは「本来害の無いモノを排除しようとする過剰な免疫反応」により引き起こされます。

ヨーグルトのアレルギーに対する効果を説明するにはもう少し詳しくご説明する必要があり、それには免疫の仕組みの理解からスタートすることが必要です。

免疫機能の仕組み

免疫とは主に有害物が体内に入ってきた時の人間の防御機能です。免疫機能は何重にも張り巡らされているため、いくつかの種類がありますが、アレルギーの原因となる免疫機能は次のようなものです。

有害物が体内に侵入すると体中に存在する「肥満細胞」という免疫機能の一つがこの有害物を捕まえます。有害物を捕まえた肥満細胞はヒスタミンという物質を放出することで一種の警報を鳴らします。警報を聞いた他の免疫細胞が集まってきてこの異物を一斉に攻撃し、撃退することで体を守ります。

この有害物を医学用語で「抗原(アレルゲン)」と言います。また肥満細胞が抗原を捕まえる際、抗原か否かを判断するための一種の道具を使います。その道具を「抗体」と言います。抗体は各抗原ごとに作られるので、抗原の種類と同じ数だけあります。

抗体はB細胞という免疫細胞によって作られ、それが肥満細胞に結合することで一連の免疫体制を構築します。

そして肥満細胞が放出するヒスタミンという物質は一時的に炎症を引き起こす作用があります。

これら、「抗原」「抗体」「肥満細胞」「ヒスタミン」といったキーワードがアレルギーに対するヨーグルトの効果を理解するのに必要となります。

アレルギーの原因は過剰な免疫反応

前述した免疫反応は体内に侵入してくる全ての有害物に対して行われます。しかし、花粉や牛乳・卵の成分など無害のものまで「抗原」と認識し、過剰な免疫反応を起こしてしまうことがあります。

そして免疫反応の過程で放出されるヒスタミンには炎症を起こす作用がありますが、その炎症を起こす場所が鼻であれば鼻水や鼻づまり、目であれば涙、喉であれば咳、皮膚であれば腫れや痒みといった症状になって現れます。

これがアレルギー症状の仕組みです。

過剰な免疫反応にはTh2細胞が関係している

ここからは少し難しい話しになりますが、ヨーグルトのアレルギーに対する効果を理解して頂く上で非常に重要なポイントとなります。是非、我慢してお読みください。

さて、アレルギーを引き起こすような過剰な免疫反応が起こる要因には遺伝や自律神経の乱れなど諸説がありますが、明確な原因は解明されていません。

しかし、そのような場合、免疫機能がどのような状態になっているかはある程度確認されています。

具体的に過剰反応している部分というのは免疫機能の中でも「抗体の生産」部分だと言うことが分かっています。もし花粉や牛乳などに対する抗体が作られなければアレルギー症状は起きないのです。つまり無害なモノに対してまで抗体が作られてしまうことがアレルギーの直接的な原因なのです。

そして、この抗体をつくる指示に大きく関与しているのが免疫細胞の一つであるTh2細胞ということが分かっています。

Th2細胞とは全免疫機能の司令官とも言えるT細胞の補助的な役割を持ちます。一方、同じT細胞の補助的な役割を持つものにTh1細胞というものがあります。Th2細胞が主に抗体を作る指示を出すのに対し、Th1細胞は実際に異物を攻撃するマクロファージやキラーT細胞といったものを活性化させる働きがあります。

Th1細胞とTh2細胞は拮抗する関係にあり、お互いの作用を抑制することでバランスを保っています。もしバランスが崩れると免疫機能に異常がでます。

Th1細胞にバランスが傾く場合は免疫の攻撃性が強くなり、自分の細胞まで攻撃してしまいます。いわゆる自己免疫疾患と言われる症状です。

逆にTh2細胞にバランスが傾くと余計な抗体が産出されていきます。いわゆるアレルギー症状が出やすい状態となります。

つまり、突き詰めるとアレルギーの原因はTh1細胞とTh2細胞のバランスが崩れ、Th2細胞が過度に活性化してしまうことにあるのです。

このことがヨーグルトがアレルギー症状を予防・改善する仕組みに大きく関係してくるのです。

なぜヨーグルトはアレルギーに効果的なのか?

ヨーグルトがアレルギーに効果的と言われるのは「免疫調整力(免疫バランスの改善)」の効能があるかと言われています。

ヨーグルトが免疫力を高めることは知られていますが、それだけではなく免疫を調整する働きがあることが確認されています。

ヨーグルトにおける「免疫調整力」とはTh1細胞とTh2細胞のバランスを正常に保つ作用のことを指します。

先に述べたように、アレルギー症状の背景にはTh2細胞が過度に活性化してしまいTh1細胞がそれを制御しきれていない状態があります。つまり、Th1細胞とTh2細胞のバランスが崩れ、Th2細胞が優位の状態となっているのです。

アレルギーを予防・改善する仕組みはTh1細胞の活性化にある

ヨーグルトが高める免疫機能は主に「マクロファージ」「NK細胞」「インターフェロン(INF-γ)」といった部分です。これらは全てTh1細胞が関係する免疫機能です(詳細は「ヨーグルトが免疫力を高める理由」参照)。

Th1細胞はTh2細胞を制御する作用がありますから、Th2細胞が過度に活性化している場合は、これを抑えて両者のバランスを整えようとします。その結果Th2細胞の作用は弱まり、花粉や牛乳・卵の成分といった無害なモノに対する余計な抗体の生産が抑制され、アレルギー症状が緩和するのです。

これがヨーグルトによる免疫調整力であり、アレルギー症状を予防・改善する仕組みなのです。

つまりヨーグルトはTh1細胞を活性化することでアレルギー症状を予防・改善すると考えられます。特にTh2細胞を主に制御するのはTh1細胞が産生するIFN-γというインターフェロンであり、このインターフェロンの産出を活性化させることがヨーグルトのアレルギーに対する最大の効果と言えます。

アレルギーに効果的なヨーグルト

免疫力を高める作用と免疫力調整力は共にTh1細胞に関係していると思われるので、免疫系に作用するヨーグルトは基本的にアレルギーにも効果があると考えられます。

そうなると、多くのヨーグルトがアレルギーに効果があるということになりますが、ここではその中でもヒトや動物に対する実験でその効果が確認されているヨーグルトをいくつかご紹介します。

おなかへGG ヨーグルト

おなかへGG! タカナシ乳業
ヨーグルトのアレルギー効果を確認した先駆的な存在。主にアトピー性皮膚炎に対する実験が多いが花粉症の症状改善なども確認されています。実験はLactobacillus rhamnosus GG株によるものなのでタカナシ乳業から販売されている他のLGG乳酸菌シリーズも同様の効果が期待できます。

たっぷり生乳ヨーグルト オハヨー乳業
ヒト由来の乳酸菌「L-55乳酸菌」を使用したヨーグルト。花粉症やアトピー性皮膚炎等の症状緩和が動物実験で確認されています。他のL-55乳酸菌を含むヨーグルトでも同様の効果が期待できます。

ビヒダス プレーンヨーグルト 森永乳業
ヒト由来のビフィズス菌「BB536株」を使用したヨーグルト。花粉症をはじめとするアレルギー症状の抑制効果が多数報告されています。

おいしいカスピ海特選生乳100% 江崎グリコ
クレモリス菌GCL1176株という乳酸菌を含むヨーグルト。カスピ海ヨーグルトは全般的に免疫力を高める効果が期待できますが、実験等で確認されているのはこの乳酸菌です。

プラズマ乳酸菌ヨーグルト KW乳酸菌 小岩井乳業
キリンホールディングスにより発見された「KW3110株(KW乳酸菌)」という乳酸菌を含むヨーグルト。実験により免疫バランスを整える効能が確認されています。キリンと小岩井が開発したプラズマ乳酸菌シリーズの一つですが、KW乳酸菌が含まれているのはこのヨーグルトのみのようです。

 

⇒ その他のヨーグルトの効果や効能を見る

最後まで読んで頂きありがとうございます

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