花粉症の予防・改善
ヨーグルトは「花粉症やアレルギー性鼻炎に効く食べ物」で必ず紹介される食品です。それだけヨーグルトの花粉症などに対する効果性が広く認識されており、実際に効果を感じている人も多いということだと思います。
大学や企業の研究報告でも花粉症に対するヨーグルトの効果が確認されています。ヨーグルトが花粉症やアレルギー性鼻炎に効果的と認識されはじめたのは比較的最近のことなので、その仕組みは完全には解明されていません。しかし、ヨーグルトが及ぼす作用などは、かなり細かい部分まで確認されています。
ここでは、それらヨーグルトの花粉症への効果に関して調べたことをまとめていますので、ご興味があればご覧ください。
なぜ花粉症になるのか?
花粉症などのアレルギー症状は免疫システムの異常によって起こります。厳密には”特定”の免疫機能の過剰反応が主な要因となっています。
人間の免疫機能はあらゆる有害物を排除できるように、高度な異物分析システムと何重もの攻撃手段を持っています。
花粉症は主にその中の二つの免疫機能の不具合によって起こること考えられています。
一つは異物分析システムの不具合です。異物が体内に入ると抗原提示細胞という免疫細胞の一種が異物を捕まえて分析し、その後、異物をどのように攻撃するかを決めるT細胞というものに情報を渡します。
この分析時に不具合が生じます。本来それほど攻撃しなくても良い花粉を有害物と断定し、攻撃対象と確定してしますのです。
二つ目は、実際に有害物を攻撃する段階での不具合です。抗原提示細胞から情報を受け取ったT細胞は異物に合わせていくつかのパターンに変化します。花粉症の場合はIgE抗体という攻撃手段を使うTh2細胞というパターンに変化します。
この時も不具合が生じます。Th2細胞が過剰に活性化し、IgE抗体が必要以上に産生されてしまうことが花粉症の直接の原因になります。
ちなみにIgE抗体とは特定の異物探知機のようなもので、これがあると分析等は省略され、その特定の異物がこのIgE抗体に接触した途端、免疫細胞が攻撃を開始するという強力な免疫機能です。
具体的にはIgE抗体は肥満細胞という皮膚や粘膜に存在する免疫細胞に結合します。花粉が体内に入り、IgE抗体に接触すると肥満細胞からヒスタミン等の化学物質が放出され、免疫細胞が一斉に攻撃を開始します。IgE抗体が過剰に産生されていると、それだけ敏感に異物に反応することになります。
尚、ヒスタミン等の化学物質とは異物に攻撃をしかける一種の合図なのですが、同時に刺激や炎症が伴い、それが部分ごとに鼻づまりや鼻水、くしゃみ、涙、だるけといった症状として現れます。これが花粉症の症状の仕組みというわけです。
ヨーグルトが花粉症に効果的な理由
ヨーグルトが花粉症に効果的な理由は、ヨーグルトの免疫力調整作用にあると言われています。
ヨーグルトに免疫力を高める効果があることはこちら(免疫力を高めるヨーグルト)で詳しく説明していますが、免疫力を「高める」だけでなく免疫力を「調整する」作用があることが確認されています。
前述したように花粉症の直接の原因は免疫機能であるTh2細胞が過剰に活性化してしまうことにあります。免疫システムは非常によくできているので、このTh2細胞の暴走を制御する細胞もちゃんと用意されています。それはTh1細胞という同じT細胞の仲間です。
Th2細胞とTh1細胞は拮抗関係にあり、通常は両者のバランスは保たれています。それが免疫の強度を強すぎず弱すぎない最適の状態にしているのです。
花粉症などのアレルギーの場合は、Th1細胞がTh2細胞を制御しきれないほどTh2細胞が活性化していることが実験などから確認できています。
ヨーグルトの効能はTh1細胞を活性化すること
多くの実験でヨーグルトがTh1細胞を活性化し、Th2細胞を抑制することが報告されています。これがヨーグルトの免疫調整力であり、ヨーグルトが花粉症の予防・改善に効果的と言える理由なのです。このTh2細胞を抑制する作用は花粉症の薬の仕組みにも利用されています。
ちなみに、なぜヨーグルトがTh1細胞を活性化するかは完全には解明されていませんが、ヨーグルトを作る過程における乳酸菌の醗酵時に産出される菌体外多糖(EPS)が強く関与していると考えられています。
その他にもまだ解明されていないヨーグルトの効果がある
ビヒダスヨーグルトでお馴染みのBB536は花粉症に効果的な乳酸菌(ビフィズス菌)として多くの実験結果がありますが、その中で、Th1細胞を活性化せずにTh2細胞の活性化を抑制したという報告があります。
これは花粉症のもう一つの原因である「抗原提示細胞による異物分析システムの不具合」を改善している可能性があると考えられられます。
このようにヨーグルトの花粉症に対する効果はまだ研究段階と言えますので、今後、更なる効果の解明やより花粉症に効果的なヨーグルトが発見される可能性は大いにあります。
花粉症に効果的なヨーグルト
ヨーグルトは乳酸菌によって効果や効能が若干異なってくるので、全てのヨーグルトが花粉症に効果があるか分かりません。ただし、免疫力が関係しているとすれば、多くのヨーグルトに効果が期待できます。
前述したように花粉症の効果がヨーグルトに含まれるEPS(菌体外多糖)にあるとすれば、EPSはヨーグルトの粘り気成分でもありますので、粘り気の多いカスピ海ヨーグルトなどはより花粉症に効果的なのかもしれません。実際にカスピ海ヨーグルトの花粉症に対する効果はメーカーなどの研究で確認されています。
以下では、そのカスピ海ヨーグルトをはじめ、研究等で花粉症に対する効果を確認できているヨーグルトをいくつかご紹介します。
カスピ海ヨーグルト フジッコ
カスピ海ヨーグルトの元祖とも言えるフジッコのカスピ海ヨーグルト。クレモリス菌FC株が産生するEPS(菌体外多糖)は他のヨーグルトにない強力な粘り気があり、花粉症への効果が高そうです。
おいしいカスピ海特選生乳100% 江崎グリコ
グリコによるカスピ海ヨーグルト。クレモリス菌GCL1176株という乳酸菌が産生するEPSはカスピ海ヨーグルト独特の強い粘り気を出します。この粘り気が花粉症に効果的と考えられます。
ビヒダス プレーンヨーグルト 森永乳業
ヒト由来のビフィズス菌「BB536株」を使用したヨーグルト。花粉症をはじめとするアレルギー症状の抑制効果が多数報告されています。
おなかへGG! タカナシ乳業
ヨーグルトのアレルギー効果を確認した先駆的な存在。主にアトピー性皮膚炎に対する実験が多いが花粉症の症状改善も確認されています。
たっぷり生乳ヨーグルト オハヨー乳業
ヒト由来の乳酸菌「L-55乳酸菌」を使用したヨーグルト。花粉症やアトピー性皮膚炎等の症状緩和が動物実験で確認されています。他のL-55乳酸菌を含むヨーグルトでも同様の効果が期待できます。
花粉症に効く効果的な食べ方
花粉症の予防・改善効果が期待できるヨーグルトの食べ方や量と期間は特に決まっていません。
各企業の実験内容を見ると、フジッコのカスピ海ヨーグルトの実験では150g/1日を1ヶ月間、BB536乳酸菌を使った実験では200g/1日を14週間、LGG乳酸菌では量は不明ですが9週間、L-55乳酸菌の実験では200ml/1日を3ヶ月という量と期間で効果が確認されています。
上記のことを考慮すると、「1日200gのヨーグルトを3ヶ月間」食べ続けることが一つの目安となりそうです。
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