ヨーグルト(乳酸菌)の発酵温度

ヨーグルトの作り方における大きなポイントの一つが<温度管理>です。

乳酸菌の活動は温度に大きく影響されます。温度が低すぎると乳酸菌は活動せず発酵できません。温度が高過ぎると乳酸菌が弱ったり死滅してしまいます。

ヨーグルトを作る時の温度管理はヨーグルト作りの成否や品質を大きく左右します。

乳酸菌が発酵しやすい温度

乳酸菌が好む温度とは乳酸発酵しやすい温度ということになります。つまり、適正な温度管理ができればヨーグルトをうまく作れる確率はグッと高まります。

乳酸菌の種類は非常に多くあるので乳酸菌の活動に適した温度も様々です。大まかにはヨーグルトに使われる乳酸菌は次の二つの種類に分けられています。

  • 好熱性乳酸菌
    高温を好む乳酸菌。定義は曖昧だが35~60℃ぐらいが活動適正温度とされる場合が多い。
  • 中温性乳酸菌
    中温を好む乳酸菌。定義は曖昧だが20~30℃ぐらいが活動適正温度とされる場合が多い。

市販のヨーグルトに使われる乳酸菌の殆どは好熱性乳酸菌です。具体的な発酵温度は公表されていませんが、多くの場合37~45℃の間と言われています。

気を付けなければいけないことは37~45℃の範囲であれば良いということではありません。市販のヨーグルトの乳酸菌にも色々な種類があるので、乳酸菌毎にもう少し狭い範囲の温度管理が必要です。

例えば、あくまで個人的な経験や調べたところによるものですが、以下のような例があります。

◆市販ヨーグルトの乳酸菌別適正発酵温度

  • 明治 ブルガリアヨーグルトLB81 → 42~45℃
  • 明治 ヨーグルトR-1 → 42~45℃
  • 明治 プロビオヨーグルトLG21 → 37℃前後
  • 雪印メグミルク ナチュレ 恵 megumi → 40℃前後
  • ヤクルト ソフール → 36~37℃
  • ダノン ダノンBIO → 40℃前後
  • 森永 ビヒダスヨーグルトBB536 → 37~41℃
  • タカナシ LGGプレーン → 37℃前後
  • etc.

このように市販のヨーグルトの乳酸菌によって微妙に適正温度が違います。勿論、これは最適な温度ですので、時間が余計にかかる可能性がありますが多少ズレがあっても乳酸発酵します。

一方、近年話題になっている市販のヨーグルトを種菌に使わない手作りヨーグルトの場合は中温性乳酸菌が使われることが少なくなりません。

例えば、「カスピ海ヨーグルト」の乳酸菌は中温性乳酸菌で、適正発酵温度は20~30℃とされています。

また、同じく代表的なTGGヨーグルト(豆乳グルグルヨーグルト)の乳酸菌の適正醗酵温度は16~20℃とされています。

基本的に植物由来の乳酸菌(植物性乳酸菌)は中温性乳酸菌が多いと思われます。

ヨーグルトを作る時の温度管理方法

市販のヨーグルトの乳酸菌を種菌にして、さらに同じく市販の牛乳を使ってヨーグルトを作る場合は常温では発酵しないため温める必要があります。しかも長時間一定の温度で管理する必要があるため、湯煎などの人力ではまず無理です。

そこで登場するのが「ヨーグルトメーカー(発酵器)」という機器です。

基本的な温度管理はヨーグルトメーカーで行う

市販のヨーグルトの乳酸菌を種菌(スターター)にする場合は「ヨーグルトメーカー」が必要不可欠です。

ヨーグルトメーカーといっても単なる保温器なのですが、手軽に乳酸発酵させることができます。

ヨーグルトメーカーは様々なメーカーから多くの種類が販売されています。もし、ヨーグルトメーカーのことを詳しく知りたい方は以下の記事をお読みください。

※ヨーグルトメーカーの比較とおすすめ商品

もしヨーグルトメーカー選びに迷うようでしたら、個人的に強くおすすめするのは次のヨーグルトメーカーです。


TANICA ヨーグルティア

乳酸菌をうまく発酵させるためには「適正な温度を一定時間保つ」ことが必要です。これを理想的に実現するために必要な機能は「温度調整」と「タイマー」ですが、なんと大半のヨーグルトメーカーにはそれらの機能がついていません。

多くのヨーグルトメーカーは設定温度が固定されており、時間の管理はスイッチのオン・オフで行います。そうなると、ヨーグルトメーカーに合わせて種菌を選ばなければいけない上、管理が面倒です。

その点、この「タニカ ヨーグルティア」は温度調整機能やタイマーがついているため様々な乳酸菌に対応でき、精度の高い乳酸発酵管理が行えるため、より品質の高いヨーグルトを作ることが可能になります。

あえて「タニカ ヨーグルティア」の欠点をあげるとするならば容器を消毒しなければいけないのが少々面倒という程度でしょう。

最初の牛乳の温度にも注意する必要がある

注意しなければいけないのは、大半のヨーグルトメーカーは基本的に保温が主機能で加熱は得意でありません

つまりヨーグルトメーカーで温度を40℃に設定しても、冷蔵庫から出したばかりの牛乳を使うと40℃になるまでにかなりの時間を要します。

その間、温度は低いままですので乳酸菌は発酵せず、なかなか固まらないだけでなく腐敗菌が増える危険性も高くなります。

「冷たい牛乳を使う」ことはヨーグルト作りが失敗する要因の一つです。発酵開始時点の牛乳は温めておくことが重要です。

温める温度は理論的には種菌となる乳酸菌の発酵適正温度ですが、30℃ぐらいを目安にすると良いでしょう。

勿論、カスピ海ヨーグルトやケフィアヨーグルト等の中温性乳酸菌系ヨーグルトの場合は20℃程度で十分です。TGG(豆乳グルグルヨーグルト)等、植物性乳酸菌を使う場合はもっと低くて良いでしょう。

尚、牛乳の温め方には注意が必要です。

牛乳を容器に移して煮沸して温めるのは絶対にやめましょう。この場合、乳酸菌が苦手とする酸素が大量に牛乳に発生することになり、うまく発酵できないことがあります。

牛乳を温める時は封を開けずにパックのまま電子レンジで温めるのがオススメです。個人的な経験ですが、牛乳パック(1L)を30℃まで温めるには電子レンジ(500W)で3~4分ぐらいです。

温め過ぎると乳酸菌が死んだり弱ってしまうので、必ずご自身で温める時間は確認してください。

植物性乳酸菌等は常温で管理

少し前に流行った「カスピ海ヨーグルト」や現在、ヨーグルトの作り方の主流になりつつある「TGGヨーグルト(豆乳グルグルヨーグルト)」などは常温で発酵するので特に温度管理の必要はありません。

カスピ海ヨーグルトの主な乳酸菌は「クレモリス菌」で、TGGヨーグルトは玄米由来の「植物性乳酸菌」です。

両者とも中温性乳酸菌なので常温で発酵します。極めて簡単な温度管理なためヨーグルトの作り方というとこちらの方が主流になりつつあります。

少し気をつけることがあるとすれば、温度が高くなりすぎないようにすることです。特に植物性乳酸菌は発酵温度が少し低めなので夏場などはやや涼しいところに置いた方がよいかもしれません。

適正温度が分からない場合

種菌となる乳酸菌の最適温度が分からなければ、まずは40℃で試してみましょう。それで固まらなければ少し温度を上げていき、分離するようなら少し温度下げて試してみましょう。

何回か失敗するとは思いますが、すぐに最適な温度が掴めてくるはずです。

温度管理に失敗すると

温度管理に失敗した時の代表的な現象は次のようなものです。

固まらない

発酵させる温度が低すぎる可能性があります。

また、既述した通り、冷たい牛乳で発酵を開始させてしまった場合によくある現象です。

固形物が分離していたり液体が多い

発酵させる温度が高すぎたり、発酵に時間をかけすぎた可能性があります。

この場合、変色していたり臭い匂いがする場合は腐敗菌が繁殖している可能性がありますので、その時は迷わず捨てましょう。

特におかしなところがなく単に分離しているだけであれば食べられないことはありません。気になる場合は、固形物は種菌にして他のヨーグルトを作りましょう。液体は栄養があるので料理に混ぜて使えます。

腐る

色や匂いがおかしければ腐っている可能性があります。迷わず捨てましょう。

温度管理が問題になるのは、不適正な温度によって乳酸菌の活動よりも悪玉菌である腐敗菌が増殖して腐る可能性があるためです。

乳酸菌が好む40℃前後は腐敗菌やカビなどが繁殖しやすい温度でもあります。通常は乳酸菌が強いため乳酸菌が増殖するにつれて腐敗菌の生存領域が無くなり死滅していきます。

しかし、温度管理が失敗して乳酸菌の活動が弱まると腐敗菌を死滅させることができず、乳酸菌と腐敗菌が共存している状態、もしくは腐敗菌が増殖して乳酸菌が死滅してしまいます。

つまり腐るのです。

温度管理で注意する点

注意点というよりは、少し留意点があります。それは以下のことです。

  1. ヨーグルトメーカーのサーモスタットは動作が不完全なことがある
    大抵のヨーグルトメーカーはサーモスタットによって温度管理を行っていますが、そのサーモスタットの精度があまりよくなく、設定温度と違っていたり、温度変化が激しくなることがあります。ちょっとおかしいと思ったら、途中で温度を図ってみることも一考です。
  2. 牛乳は温めてから乳酸菌を混ぜる
    既述しましたが、冷たい牛乳からスタートすると失敗する確率が高まるので、牛乳は必ず温めて(中温性乳酸菌の場合は常温程度)から発酵させましょう。
  3. 温度設定が間違うと想定以外の乳酸菌で発酵することがある
    市販のヨーグルトに含まれている乳酸菌は大抵の場合、複数のものが混在しています。発酵させようと思った乳酸菌が好む温度設定ではなく、他の乳酸菌が好む温度設定になってしまっている場合はそちらの乳酸菌が発酵してしまい、意図したヨーグルトにならない可能性があります。

これらのことは頭の片隅に置いておく必要はありますが、それほど気にしなくても大丈夫です。基本的には何回かやれば大体は成功します。

まずはチャレンジしてみてください。

最後まで読んで頂きありがとうございます

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