虫歯・歯周病予防
ヨーグルトは歯の健康にも効果的ということが分かっています。
ヨーグルトには歯そのものを強くする効能もありますが、それ以外にも虫歯や歯周病を予防する効能があることが分かってきています。
ヨーグルトが歯を強くする仕組み
ヨーグルトが歯を強くするという理由はヨーグルトに含まれる豊富なカルシウムにあります。
ヨーグルトは歯の成長段階に効果的な食べ物
歯茎から出ている歯の白い部分は外側がエナメル質でできており、内側は象牙質でできています。エナメル質も象牙質もハイドロキシアパタイトを主成分としています。
ハイドロキシアパタイトとはカルシウムとリン酸から構成されている非常に固い物質です。つまり私達が歯と呼んでいるものの殆どはカルシウムとリン酸で成り立っているのです。
歯が生える時や生え替わる時にカルシウムやリン酸が不足すると健康な歯が生えてこない可能性があります。
ヨーグルトにはカルシウムが豊富に含まれているため丈夫な歯をつくるのに効果的です。しかもヨーグルトにはミネラルやたんぱく質がバランスよく含まれているため高い吸収率も見込めます。
歯が生える成長期は特にカルシウムが必要ですので、その期間にヨーグルトを摂ることは歯を強くするためにとても効果的と考えられます。
ヨーグルトは歯の再石灰化にも寄与する
また、ヨーグルトは軽い虫歯にも効果的と考えられます。
虫歯の初期段階では歯の外側にあるエナメル質が虫歯菌の酸で少しずつ溶かされていきます。しかし、健康的な口内環境であれば歯の再石灰化という自然治癒力でエナメル質は再生されます。これは唾液の中にエナメル質の主成分であるカルシウムやリン酸が含まれているためです。
カルシウムが不足していると唾液中のカルシウムも減少し、歯の再石灰化能力が低下します。そういった意味でもヨーグルトに含まれるカルシウムは歯の再石灰化を促進し、歯を強くする効果があると言えるのです。
ヨーグルトが虫歯、歯周病を予防する仕組み
近年、ヨーグルトに虫歯や歯周病を予防、改善する効果・効能があることが分かってきました。
ヨーグルトが腸内環境を改善する効果があることはよく知られています(ヨーグルトの腸内環境を改善する効果はこちら)。その仕組みは腸内フローラと呼ばれる腸内細菌叢において善玉菌を増殖させ、腸内環境を乱す悪玉菌を排除するというものです。
口の中にも細菌が無数に存在し、オーラルフローラと呼ばれる腸内細菌叢と同様の口内環境があります。
実は虫歯も歯周病も原因はこの細菌にあります。虫歯は虫歯菌(ミュータンス菌)によるもので、歯周病はプラークを形成する様々な口内細菌(歯周病菌・歯周病原菌)が原因になります。
ヨーグルトに含まれる乳酸菌が腸内の悪玉菌を排除するのと同じように、口内の虫歯菌や歯周病菌を排除できることが分かってきたのです。
ヨーグルトによる虫歯・歯周病における予防効果発見の経緯
乳酸菌及びヨーグルトが虫歯や歯周病、口臭などを予防・改善するという報告は昔からありました。その中でも広島大学大学院の二川浩樹教授の研究報告は一つのターニングポイントになっていると思われます。
二川教授の研究の発端は、ある精神病院の入院患者さんの中で十分に歯磨きができないのにも関わらず虫歯になったことのない人がいるのは口内に虫歯を抑制する強力な乳酸菌が存在しているからであろうと想定したところから始まります。
そこで二川教授は虫歯になったことのない人達の唾液から乳酸菌を集めて虫歯菌や歯周病菌を抑制する三種類の乳酸菌を探し当てました。
さらに、その内の一種類の乳酸菌を使い虫歯と歯周病の予防に特化したヨーグルトを民間企業の四国乳業と共同で開発しています。
そのヨーグルトの名前は「8080ヨーグルト」といいます。
また、虫歯と歯周病に効果を示す乳酸菌はそれ迄にも見つかっていましたが、一つの乳酸菌で両方の細菌を抑制する乳酸菌は見つかっていなかったことから、このヨーグルトに使われた乳酸菌をL8020菌と名づけています。
この例をはじめ乳酸菌は虫歯や歯周病の予防や改善に効果があることは、様々な研究で報告されています。
虫歯、歯周病の予防・改善効果のある乳酸菌の種類
乳酸菌であれば何でも虫歯や歯周病に効果があると言うわけではありません。どうやら虫歯菌や歯周病菌を抑制する菌は特定のものに限られるようです。
つまり、ヨーグルトに含まれている乳酸菌すべてが虫歯・歯周病に対して予防・改善効果があるわけではないのです。
研究報告などで虫歯菌もしくは歯周病菌に対する効果が見られたのは以下のような乳酸菌です。
ラクトバチルス・ラムノサス(L8080菌)
ラクトバチルス・カゼイ菌
ラクトバチルス パラカゼイ菌
ラクトバチスル・ブルガリカス菌
ラクトバチルス・ロイテリ菌
ラクトバチルス・サリバリウス TI2711菌(LS1)
etc.
虫歯・歯周病に対する乳酸菌の効果はまだまだ研究段階なので、この後も効果のある乳酸菌がでてくると思われます。
虫歯、歯周病の予防・改善効果のある乳酸菌を含むヨーグルト
虫歯や歯周病を予防、改善するヨーグルトとは前段で紹介した乳酸菌を含むヨーグルトということになります。
しかしながら、日本ではこれらの乳酸菌を含むヨーグルトは殆ど販売されていません。よって、この乳酸菌をスターターとして自分で作るということとなります。
市販のヨーグルトでは、今のところ四国乳業で販売されている8020ヨーグルトしかありません。8020ヨーグルトにはラクトバチルス・ラムノサス(L8080菌)の乳酸菌が含まれています。
以前はチチヤス乳業からラクトバチルス・ロイテリの乳酸菌が含まれているロイテリ菌ヨーグルトという製品が販売されていましたが、残念ながら現在では販売中止となっています。
●ロイテリ菌ヨーグルト(チチヤス乳業)
前述したように、虫歯・歯周病に対するヨーグルトの効果もまだ研究段階ですので他の製品でも実は効果があったということもあるかもしれません。
尚、ヨーグルトではありませんが、前段で紹介した虫歯・歯周病に効果のある乳酸菌を含むタブレット食品や飲料、サプリメント等は多く販売されています。
※虫歯・歯周病用の乳酸菌製品例
虫歯、歯周病の予防・改善におけるヨーグルトの食べ方
ヨーグルトで虫歯や歯周病を予防、改善するには、まず虫歯菌、歯周病菌を抑制する乳酸菌を含むヨーグルトを選ぶ必要があります。
前段でご説明したように、現段階での選択肢は8020ヨーグルトしかないでしょう。
このヨーグルトをどうすればいいかと言いますと「ただ食べる」だけです。
研究報告では、50名の人にこの8020ヨーグルトを2週間の間、毎日昼に1個食べてもらったところ虫歯菌は80%以上、歯周病菌(4種類)は40~90%減少させる結果が出たそうです。
特に昼に食べる必要はありませんが1日1個は食べた方が良いとのことで、歯磨きも普通にして構わないようです。
ヨーグルト歯磨きの信ぴょう性
ヨーグルトが虫歯や歯周病に効果があることがメディアなどで報じられると決まって話題にあがるのが「ヨーグルト歯磨き」というものです。
ヨーグルト歯磨きというのは、その名の通りヨーグルトで歯を磨くことで乳酸菌を歯に定着させ、虫歯や歯周病菌を抑制するというものです。
これは前述したように、ヨーグルトに含まれる乳酸菌が虫歯菌、歯周病菌を抑制する効果を応用したものになります。
具体的には次のように行います。
- 通常通り歯を磨く
- 一度口をすすぐ
- 歯ブラシにヨーグルトをつけて歯を磨く
- 口をすすがず、そのままヨーグルトを食べるか吐き出す
これがヨーグルト歯磨きと呼ばれるものですが、残念ながら現時的とは言えないでしょう。
その理由は、まず、この歯磨きで使うヨーグルトは虫歯菌、歯周病菌を抑制するヨーグルトでなければいけません。となると、現在では8020ヨーグルトしか選択肢がありません。
次にヨーグルトに砂糖が入っていると虫歯を促進させてしまうので無糖のヨーグルトである必要がありますが、8020ヨーグルトに無糖タイプはありません(以前はありましたが販売終了しています)。
ということは、市販のヨーグルトではなく自分でヨーグルト歯磨き用のヨーグルトを作らなければならないのです。
それも不可能ではありませんが、そこまでするのであればラクトバチルス・サリバリウス TI2711菌(LS1)もしくはラクトバチルス・ラムノサス(L8080菌)が入ったタブレットやマウスウォッシュがあるので、そちらを利用するのが現時的と思われます。
◆乳酸菌による虫歯・歯周病予防、改善製品例
つまり、ヨーグルト歯磨きの信ぴょう性は別として、ヨーグルト歯磨き用にあったヨーグルトが市販されていない現段階ではヨーグルト歯磨きは虫歯予防、歯周病予防に効果的とは言えないのです。
普通に8020ヨーグルトを食べるのが良いでしょう。
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