痛風の予防・改善

ヨーグルト痛風の予防および改善に効果的な食品の一つです。正確には痛風の要因である尿酸値を下げる効果があると言った方が正しいかもしれません。

この効果が発見されたのは最近のことで、現在では特定のヨーグルト(乳酸菌)においてのみこの効果が確認できている状況です。つまり、現状においては殆どのヨーグルトにこの効果を期待することはできません。ただ、まだこの分野の研究は始まったばかりなので今後の進展は多いに期待できます。

ここでは、そのようなヨーグルトや乳酸菌の紹介、痛風を予防・改善する仕組み、効果的な利用法などに対して調べた内容をまとめています。もし、ご興味あればお読み下さい。

痛風とは?

ヨーグルトの痛風予防・改善効果の仕組み等をご説明する前に、簡単に痛風のことを理解しておきましょう。

痛風とは血液中に尿酸が増えることでできる尿酸結晶が関節に沈着し、炎症を起こして激痛を訴える病気です。足の親指の付け根のところに結晶が溜まることが多く、風が吹いただけで激痛になることから”痛風”と名付けられています。

※尿酸とは?

尿酸とは体内にあるプリン体という物質が分解されて最終的に残る老廃物です。通常は尿として排出されますが、プリン体が過剰になると尿酸の量も増え、痛風になりやすくなります。

※プリン体とは?

プリン体とは体内の細胞の核を構成したり、私達が活動するためのエネルギーを作る時に必要となる物質です。細胞が古くなったり、エネルギーが作り出された後は不要となり、余分なプリン体ができます。多くのプリン体は再利用されますが、必要以上のプリン体はそのまま分解され、最終的に尿酸になります。

痛風の症状

痛風の症状で代表的なのは関節部分の炎症と激痛です。足の親指の付け根に発症することが多いですが、手、肩、腰など体のどの部分でも発症する可能性があります。

痛風の初期症状であればこの激痛は10日もすれば治まります。しかし、痛風になる体質をそのままにしておくと、症状が定期的に発症し、悪化していきます。酷い場合は尿路結石や腎臓病などの合併症を引き起こします。

痛風の原因

痛風の直接の原因は尿酸が体内に増えることです。尿酸が増える原因はプリン体が増えることにあります。つまり、痛風の根本的な原因はプリン体です。では、プリン体が増える原因は何でしょう?

プリン体が増える原因

プリン体は通常、8割が体内で生成され、残りの2割を食べ物から摂り入れています。つまり、影響が大きいのは「体質」、つまり遺伝や生活習慣の要素です。

しかし、明治以前に痛風は日本に無かったという記録があります。だとすれば、元来日本人は痛風になる体質では無かったと言えるでしょう。また、近年アジア全体でも痛風が急増してきたと言われます。

そのようなことから、痛風になる主な原因は食事内容にあると言われます。特に動物性たんぱく質やアルコール飲料によるものの影響が大きいと考えられています。

ヨーグルトが痛風を予防・改善する仕組み

食べ物から摂取したプリン体は全て体内に吸収されるわけではなく、ある程度のものは腸内の微生物や発酵物によって代謝(分解したり他の物質に変換する)されたり、微生物自身の栄養素として消費されることが分かっていました。

ヨーグルトに含まれるある種の乳酸菌にも同様の性質があることが分かっています。ある実験においては、プリン体の存在下における乳酸菌がそれを摂り込み、増殖していたことが確認されています。

つまり、ある種の乳酸菌は食べ物として摂り入れたプリン体を代謝したり、自身の栄養素とすることで体内への吸収を抑制し、結果として尿酸を減らすのです。

これがヨーグルトが痛風を予防・改善する仕組みの基礎となります。更に具体的な仕組みはヨーグルトに含まれる乳酸菌によりますので、次の段落で詳しくご説明します。

痛風を予防・改善する乳酸菌およびヨーグルト

前段でご説明したように、ある種の乳酸菌にはプリン体の吸収を抑制し、尿酸を減らすことで痛風を予防したり改善する効能があります。「ある種」とあるように全ての乳酸菌及びヨーグルトにこの効果が期待できるわけではありません。

では、どのような乳酸菌やヨーグルトにこの効果が期待できるのでしょうか?

いくつかの実験からラクトバチルス・ガセリ菌(Lactobacillus gasseri)系の乳酸菌にプリン体を摂り込み、増殖する性質があることが発見されました。

しかしながら、当然ラクトバチルス・ガセリ菌の中でもその性質を持たないものもあります。そこで、株式会社明治はラクトバチルス・ガセリ菌の中からプリン体に関与する性質の高い乳酸菌を選抜し、プリン体の吸収抑制効果を持つ乳酸菌を開発しました。

それが、ラクトバチルス・ガセリ PA-3株(Lactobacillus gasseri OLL2959)です。

そのラクトバチルス・ガセリ PA-3株を含むヨーグルトは次にご紹介します。

明治プロビオヨーグルト PA-3

「明治プロビオヨーグルト PA-3」はプリン体の吸収抑制に特化したヨーグルトと言えます。

現在のところ研究報告などで明確にプリン体の吸収抑制効果が発表されている乳酸菌はラクトバチルス・ガセリ PA-3株だけですので、「痛風を予防・改善する効果がある」と言えるヨーグルトはこの「明治プロビオヨーグルト PA-3」だけでしょう。

尿酸値が高かったり、痛風が気になる方にはお薦めのヨーグルトです。

「PA-3」がプリン体の吸収を抑制する具体的な仕組み

「明治プロビオヨーグルト PA-3」におけるプリン体の吸収抑制効果は3つの仕組みから成ります。

一つ目はプリン体を体内に吸収されにくい「プリン塩基」という物質に分解する作用です。

プリン体には主に「プリンヌクレオチド」「プリンヌクレオシド」「プリン塩基」の3つの形態があります。食べ物として体内に入るプリン体の多くはプリンヌクレオチドですが、体内で分解・代謝されることでプリンヌクレオチド→プリンヌクレオシド→プリン塩基と変わっていきます。

プリン塩基の形態になると腸から吸収されにくいため体外へ排出されますが、大半はプリンヌクレオチドやプリンヌクレオシドの段階で腸から体内に吸収されてしまいます。

ラクトバチルス・ガセリ PA-3株はプリンヌクレオチドやプリンヌクレオシドを体内に吸収されにくいプリン塩基に代謝することでプリン体の吸収を抑制する効果があります。

二つ目はプリン体を菌体内に取り込む作用です。

ラクトバチルス・ガセリ PA-3株は「プリンヌクレオチド」「プリンヌクレオシド」「プリン塩基」のどの形態のプリン体も菌体内(PA-3自身)に摂り込んでしまう作用があります。

菌体内に摂り込まれたプリン体は当然体内には吸収されません。そのため、プリン体の吸収は抑制されるわけです。

三つ目は摂り込んだプリン体を栄養源にして増殖する作用です。

二つ目の作用の延長になりますが、ラクトバチルス・ガセリ PA-3株はプリン体を栄養源にして増殖することができます。

その為、プリン体の吸収を単に抑制するだけでなく、自身をプリン体によって増殖させ一つ目とふたつ目の効果を更に高めることができるのです。

以上、三つの作用により「明治プロビオヨーグルト PA-3」はプリン体の吸収を抑制することで、尿酸の産生を減らし、痛風を予防したり改善する効果が期待できるのです。

その他、注目の乳酸菌「ブレビス菌」

最近、日東薬品から「ブレビス菌」という乳酸菌が発表されました。ブレビス菌は正式名をラクトバチルス・ブレビスNTM003株(Lactobacillus brevis NTM003)と言います。

研究報告によるとラクトバチルス・ブレビスNTM003株はプリン体の吸収を抑制し、尿酸値を低下させることが確認できたため、痛風や尿路結石の疾患予防に期待が持てるとされています。

乳酸菌は人との相性があるので、「明治プロビオヨーグルト PA-3」で効果が無かった場合に他の選択肢があることは非常に有益です。

まだ研究段階なので私達が試すことはできませんが、商品化が進められているようなので今後に期待です。

痛風に効果的なヨーグルトの食べ方

現在のところ明確に痛風の予防や改善に期待が持てると言えるヨーグルトは「明治プロビオヨーグルト PA-3」しかないのですが、このヨーグルトはどのように食べるのが効果的なのでしょうか。

メーカーが提供している情報には効果的な食べ方に関する記載がないので基本的に決まった食べ方は無いのでしょう。

そこで、あくまで私見にはなりますが様々な資料から得た情報を元にお勧めの食べ方をご紹介します。

食べる量

痛風を予防・改善する効果の仕組みが乳酸菌によるプリン体の分解・代謝だとすると、乳酸菌が多ければ多いほど多くのプリン体が分解・代謝され、体内に吸収される量が減ると想定できます。

つまり、沢山食べればその分効果が高まると推測できますが、多く食べるとカロリーや糖分を過剰に摂取してしまう危険性があります。なにより費用面で厳しいものがあるでしょう。

研究報告や特許情報等の資料を調べると、85gのヨーグルトを1日2回食べると効果が出ていることが分かります。(乳酸菌量は1×108cfu/g。)

「明治プロビオヨーグルト PA-3」は1個115gですので1日2個というのが一つの目安になるでしょう。

実験より少し量が多いですが、実験で使われているヨーグルトは高濃度と想定できるので丁度良いぐらいと思われます。

食べるタイミング

「いつ食べれば良いか」ということも特に決まっていません。しかし、一般的に食前は胃酸が濃くなる傾向があり、乳酸菌の生存率が落ちるため効果性が低くなる可能性があります。ですので食後が良いでしょう。

実験等を見ても殆どが食後にヨーグルトを食べさせています。前段の通り、1日2回が目安になっているので、朝食、昼食、夕食の内、いづれかの食後2回食べるのが良いでしょう

ただし、プリン体が消化される時に乳酸菌が存在しないと意味がないので、食後の早い時間に食べるようにしましょう。

食べる期間

「どのくらいの期間ヨーグルトを食べ続ければ良いのか」ということも特に決まっていません。

しかし、実験では4~8週間という期間が設定されているものが多く、概ね8週間の場合は効果が出ているようです。

ラット(動物)による試験では、乳酸菌の単体投与でも尿酸値の低下が確認できていることから、期間に関わらず効果が期待できる可能性はありますが、やはり8週間を一つの目安とするのが良いでしょう。

尚、PA-3乳酸菌が腸内に定着する可能性は極めて低いと考えられます。つまり、尿酸値が高くなる食生活を続ける場合は継続して食べ続ける必要があります

ヨーグルトに痛風の予防・改善を期待する場合の注意点

現時点で痛風への効果を期待できるヨーグルトは「明治プロビオヨーグルト PA-3」しかありません。つまり選択肢が一つしかないのです。

乳酸菌は体質との相性があるので、全ての人に同様の効果が期待できるものでは無いことを留意しておく必要があります。

また、いくつかの実験を見るとプリン体摂取が極めて多い人にはあまり効果が出なかったという結果もあります。勿論、PA-3を食べる量を更に増やせば効果が上がるのかもしれませんが、その場合、カロリーや脂質、糖質の過剰摂取につながり別の健康被害が出る可能性があります。

そういった背景もあるため、ヨーグルトにおける痛風の予防・改善はあくまで補助的な方法と考えた方がよいでしょう

痛風を予防・改善する基本的な方法は食事制限です。また、ラクトバチルス・ガセリ PA-3株のようにプリン体の吸収を抑制する効能がある食品・成分として玉ねぎや菊花ポリフェノールなどがありますので、ヨーグルトをそれらと組み合わせ、自分なりに無理なく継続できる方法を考える必要があるでしょう。

もちろん実際に痛風の症状に苦しんでいる場合は、病院で診てもらうことが先決です。現在では非常に良い薬があるので無理に食事療法をする必要はありません。

⇒ その他のヨーグルトの効果や効能を見る

最後まで読んで頂きありがとうございます

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