食中毒の予防

食中毒を予防する食べ物にはショウガやわさび、にんにくやお茶などいくつかありますが、ヨーグルトもその一つにあげられます。

しかも、ヨーグルト以外の食品は主に菌を直接殺すという殺菌作用がメインですが、ヨーグルトはどちらかと言うと、食中毒に負けない体質をつくることがメインになっています。

ここでは研究論文などを調べてヨーグルトの食中毒予防効果をまとめていますので、ご興味があればご覧ください。

食中毒とは?

ヨーグルトの食中毒予防効果を理解するために簡単に食中毒のことをご説明しておきます。

食中毒とは食べ物と一緒に有害な微生物や物質を体内に摂り入れてしまい、その結果、腹痛や下痢、嘔吐、発熱などの中毒症状を発症することです。

食中毒の原因となる微生物や物質には細菌やウィルス、寄生虫や自然毒、化学物質などがありますが、殆どの場合は細菌ウィルスです。

細菌やウィルスの例としては「腸管出血性大腸菌(O-157)」「カンピロバクター 」「サルモネラ属菌」「セレウス菌」「ブドウ球菌」「ウエルシュ菌」「ノロウイルス」などがあります。

ヨーグルトが食中毒の予防に効果的な理由

食中毒は主に「細菌」や「ウィルス」によって引き起こされると述べましたが、この細菌やウィルスはそこら中に存在していて、全くゼロにするというのは不可能です。

ですので、私達は食中毒を起こす可能性がある「細菌」や「ウィルス」を絶えず体の中に摂り入れてしまっていると考えて良いのです。

では、そのような状況下で、なぜ食中毒が発症する場合と発症しない場合があるのでしょうか?

それは、簡単に言うと「細菌・ウィルス」と「私達の防衛力(免疫力)」の力関係の結果なのです。通常は私達の防衛力の方が強いためにちょっとやそっとのことでは食中毒にはなりません。

しかし、体内に入る細菌やウィルスが急激に増加したり、私達の防衛力(免疫力)が低下した時などに力関係が逆転し、食中毒が発症します。

一般的な食中毒の予防方法

食中毒の予防する基本的な方法は「手洗い」や「調理器具をよく洗う」、「新鮮な食材を使う」「加熱調理を行う」など衛生管理を徹底することです。

これらの方法でも細菌やウィルスをゼロにすることは不可能ですが、確実に細菌やウィルスの量を減らすことができます。

つまり、一般的な食中毒の予防方法とは細菌やウィルスの量を減らすことで、私達の防衛力(免疫力)より強くならないようにすることが目的となっています。

食中毒に効くと言われる食品の多くも同様の予防方法

ショウガやわさび、にんにくやお茶など食中毒に効くと言われる食品がありますが、これらの殆ども前述した「一般的な食中毒の予防方法」と同様の原理です。

ショウガやワサビなどには殺菌作用があります。これらを飲食したり、薬味などにすることで体内に入ってくる細菌やウィルスを殺菌し、量を減らすのです。

ヨーグルトの食中毒予防方法

ヨーグルトの食中毒予防方法は前述した「一般的な食中毒の予防方法」とは少し異なります。ヨーグルトの食中毒予防方法は細菌やウィルスの量を減らすというよりは私達の防衛力つまり免疫力を高めることなのです。

ヨーグルトの「免疫力を高める効果」は「腸内環境を改善する効果」と並ぶヨーグルトの二大効果と言えます。

ヨーグルトは免疫力の高めることによって食中毒を予防するわけですが、その具体的な仕組みは大きく次の2通りと考えられています。

  1. 細菌やウィルスの腸管への侵入を防ぐ
  2. 免疫機能を活性化させ侵入してきた細菌やウィルスを撃退する

1.細菌やウィルスの腸管への侵入を防ぐ

食中毒を引き起こす多くの細菌やウィルスは、主に口から入って腸に達し、腸管の上皮細胞から体内に侵入・繁殖していきます。お腹が痛くなるのはこの時に細胞が破壊され、炎症が起こるためです。

人間の免疫力は腸の上皮細胞に粘膜を張って細菌やウィルスの侵入を防ぎます。この粘膜はIgA(免疫グロブリンA)という免疫組織で構成されています。

このIgAは有害物の付着及び感染を阻止し、さらに有害物が産出する毒素を中和することで上皮細胞への侵入を防いでいます。

しかし、これも「細菌・ウィルス」と「IgA」の力関係が食中毒になるかならないかに大きく影響してきます。

ここにヨーグルトにおける食中毒予防効果の一つ目の仕組みが隠されています。

ヨーグルトに含まれる一部の乳酸菌にはこのIgAの分泌を増強させることがことが確認されているのです。IgAが増強されることでIgAの力が強くなり、腸管の上皮細胞に侵入してくる細菌やウィルスに対する免疫力がアップするのです。

つまり、ヨーグルトには腸の粘膜を強力にすることで食中毒を予防する働きがあるのです

この働きに関してはビフィズス菌、R-1乳酸菌、SBT2055株、LC1乳酸菌、K-2乳酸菌などの他、多くのラクトバチルス(Lactobacillus)属の乳酸菌において効果が確認されたという研究報告があります。

2.免疫機能を活性化させ侵入してきた細菌やウィルスを撃退する

腸の粘膜は強力な防御となりますが完全に細菌やウィルスをシャットアウトすることはできません。腸は栄養分を吸収しなくていけないので、防御と吸収という非常に繊細なバランスの上に成り立っているのです。そのため、どうしても粘膜を通り抜ける細菌やウィルスは存在します。

腸の粘膜を通り抜けた細菌やウィルスは腸の上皮細胞から体内に侵入して繁殖を始めます。

このように侵入してきた細菌やウィルスを撃退するのもやはり免疫機能です。免疫機能には様々な防御方法が用意されているため、たとえ粘膜による免疫が突破されても別の免疫機能がそれをカバーするのです。

ここにヨーグルトにおける食中毒予防効果の二つ目の仕組みが隠されています。

多くのヨーグルトには主要な免疫機能を活性化させ、免疫力を高める働きがあります。具体的にはマクロファージやNK細胞などの免疫細胞、インターフェロン(INF-γ)などのサイトカインを活性化させます。(さらに詳しいことはこちら(ヨーグルトの免疫力を高める効果)を参照ください。)

このことにより通常であれば食中毒になるレベルの細菌やウィルスでも撃退することが期待できるのです。

このようにヨーグルトは2段階で免疫力を高め、食べ物に付着した細菌やウィルスを撃退することで食中毒を予防するのです。

食中毒予防に効果的なヨーグルト一覧

食中毒を予防する効果の高いヨーグルトとは、前述した通り「腸粘膜であるIgAを増強させるヨーグルト」と「免疫機能を活性化させるヨーグルト」になります。

程度の差はあるものの殆どのヨーグルトは両者もしくはどちらかの作用があります。ですので基本的には自分に合ったヨーグルトを選べば良いですが、ここでは研究論文等で効果性が明確になっており食中毒予防効果が期待できるヨーグルト製品をいくつかご紹介します。

ビヒダス プレーンヨーグルト 森永乳業
ビフィズス菌BB536を含むヨーグルトです。IgAを増強させる効能と免疫機能を活性化させる作用が確認されています。

明治プロビオヨーグルト R-1 明治
R-1乳酸菌と言われる1073R-1株を含むヨーグルト。免疫機能を活性化させる効果が高いことで知られており、IgAも活性化させる作用も確認されています。

ナチュレ 恵 雪印メグミルク
ガセリ菌SP株と言われるSBT2055株とビフィズス菌を含むヨーグルト。どちらの乳酸菌にもIgAを増強させる効能が期待できます。

おなかへGG ヨーグルト

おなかへGG! タカナシ乳業
おなかへGGに含まれるLGG乳酸菌は免疫力を高める効果が高いことで知られていますが、IgAを活性化させる作用も確認されています。

カスピ海ヨーグルト フジッコ
カスピ海ヨーグルトに含まれる乳酸菌クレモリス菌 FC株には免疫力を高める効果もIgAを活性化させる作用も確認されています。

食中毒を予防するヨーグルトの食べ方

食中毒を予防するためのヨーグルトの食べ方は特に決まっていませんが、食中毒になる細菌やウィルスがいつ侵入してくるか分からないことを考えれば常時ヨーグルトを食べていることが必要でしょう。

また、免疫力に影響を及ぼす乳酸菌が効果を発揮するにはある程度の量と時間が必要と言われています。つまり、即効性はありません。

乳酸菌の効果を期待する場合は、一般的に1日200gのヨーグルトを最低2週間は継続して食べる必要があると言われていますので、食中毒予防を期待する場合もそれを目安としてよいでしょう。

食中毒におけるヨーグルトの注意点

ヨーグルトは食中毒予防には効果的ですが、食中毒が発症してしまってからは食べるのを控えた方が良いようです。

多くのヨーグルトに含まれる糖質や脂質は腸に負荷をかけるため食中毒による症状を悪化させるおそれがあります

ヨーグルトが食中毒の症状を改善させるという話しもありますが、それは食中毒を起こす細菌やウィルスによって乱れた腸内環境を改善するという意味で、あくまで回復段階の話しです。

確かに食中毒の回復段階ではヨーグルトは効果的という見方もできますが、その場合でも糖質や脂質が含まれないヨーグルトを選ぶようにしましょう。

⇒ その他のヨーグルトの効果や効能を見る

最後まで読んで頂きありがとうございます

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