肝機能改善・肝臓病予防
ヨーグルトは肝機能改善や肝臓病予防に効果的と言えますが、ヨーグルトが直接、肝臓に作用することは殆ど無く、その効果は腸内環境を改善する効果の延長線上にあるものと言えます。
ヨーグルトが肝臓に効果的ということは様々な文献等で示唆されていますが、前述の通り間接的な要素が強いためか明確な証拠を示す実験データ等は殆どありません。
しかしながら、色々調べてみるとヨーグルトが肝臓病を予防したり肝機能を改善する理屈には少なからず説得性があります。そしてこの効能はヨーグルトの他の効果とされる「免疫力を高める効果」や「肌荒れ・ニキビの予防改善効果」にも関係するものであることが分かります。
ここではそれら調べた内容をまとめてみましたのでご興味があればご覧ください。
肝臓の働き
ヨーグルトの効能を説明するには、多少なりとも肝臓の知識が必要になりますので簡単にご説明致します。
肝臓は「肝心要」という言葉に使われていることからも分かるように非常に重要な働きを持った臓器です。肝臓の働きは実に多くあるのですが、大きく以下の2つに分けることができます。
1.栄養成分の処理
食べ物に含まれる栄養成分の殆どは小腸から吸収されます。しかし、この段階の栄養成分は体内で利用できる形になっていません。
そこで、小腸から吸収された栄養成分はそのまま肝臓に運ばれ、それらの成分を別の成分に変えたり、他の成分と合成したりして体内で利用できる形に変換します。また、栄養成分が必要以上になってしまった場合は、更に別の形に変換し貯蔵できるようにします。
例えば、炭水化物を摂った場合、小腸で消化されて乳糖や果糖、ブドウ糖として吸収されますが、肝臓ではこれらを体内で利用できるに全てブドウ糖へ変換します。必要以上のブドウ糖はグリコーゲンという物質に変換され不足した時の為に貯蔵されます。
2.不要物の処理
肝臓には体にとって不要もしくは有害なものが送り込まれます。送り込まれた不要物や有害物は肝臓で分解や解毒処理され無害化された上で排出されます。
例えば、古くなった赤血球のヘモグロビンは肝臓でビリルビンという物質に変換されて腸に送られ排出されます。また、お酒を飲むと体内にアセトアルデヒド、アンモニアといった有害物質が発生しますが、これらは肝臓で分解され無害化された後、尿や便として排出されます。
肝臓病とは?
前述したように肝臓は私達が生きていく上で必要な物質を生産し、不要な物質を廃棄する働きを持っています。そして人間は生きている限り活動を続けていますから、肝臓は絶えずこの大変な処理を行っているのです。
肝臓はとても丈夫で再生能力の高い臓器なので多少のことでは弱ったりしません。しかし、生活習慣の乱れなどで肝臓への負担が継続すると流石の肝臓も疲弊して肝機能が弱ってきます。
肝臓の負担になる要素には次のようなものがあります。
- 食べ過ぎ
現代食は食べ過ぎると自動的に脂肪分や糖分を過剰に摂取してしまう傾向にあります。過剰に摂取した脂肪や糖は肝臓内に中性脂肪やコレステロールとして蓄積され、限界を超えると脂肪肝という肝臓病になります。 - お酒の飲み過ぎ
お酒を過剰に摂取するとアルコールを分解・解毒するのに肝臓の負担が大きくなり、更に糖質を過剰に摂取することになるので食べ過ぎ同様、中性脂肪が溜まり脂肪肝になります。 - ウィルスなどによる感染
食べ物や血液などを通してウィルスが感染し、肝臓にダメージを与えることがあります。代表的なのは肝炎ウィルスで、A型肝炎、B型肝炎などの原因となります。 - 有害物質の摂取
肝臓は有害物質を分解し無害化する働きがありますが、現代生活において有害物質は非常に多く、肝臓を疲弊させる大きな原因になります。有害物質の例としては、タバコ、排気ガス、食品添加物、細菌などです。またアンモニアなど体内で発生する有害物質もあります。 - 不規則な生活
不規則な生活は肝臓に休ませる時間を与えず、ダメージを大きくします。また、ストレスも溜まることで血流が悪くなり、肝臓の再生能力を衰えさせます。
このような肝臓への負担が続くと肝機能が弱り、多くの場合は脂肪肝や肝炎となります。更にひどくなると肝硬変へ進展し、最悪の場合は肝臓ガンになります。
肝臓は沈黙の臓器と言われ、上記のように症状が悪化しても痛みなど目立った症状が出ません。そして気付いた時には重症になっているということがありますので、普段から肝臓に負担をかけないように気をつけることが大切なのです。
ヨーグルトが肝臓病予防や肝機能改善に効果的な理由
ヨーグルトが肝機能改善や肝臓病予防に効果的と言われるのは主に以下の3つの理由からです。
それぞれ詳しくご説明します。
1.体内の有害物質を減らし肝臓の負担を軽くする
体内には絶えず有害物質が発生しています。呼吸をすれば一緒に細菌やウィルスも口から入ってきます。殆どの食べ物には有害物が付着・混入しています。体内で消費された組織や細胞も放っておけば有害物となります。
これらを防御するのは免疫機能であり、胃酸であり、体内に住み着く善玉の細菌です。そして最後の砦と言えるのが肝臓なのです。
肝臓は最後の砦として有害物を分解・解毒する過酷な作業を絶えず黙々とこなしていますが、この作業の負担を大きくするのが「腸内環境の乱れ」です。
「腸内環境の乱れ」は多くの有害物質を発生させる原因となります。
まず、腸内環境が乱れていると食べ物の健全な消化・吸収が行われず、本来排出されるべき有害物質が体内に吸収されてしまうことがあります。
また、腸内環境が乱れているとウェルシュ菌などの悪玉菌が発生し、インドールや硫化水素といった有害物質を産出します。
さらに、腸内環境が乱れると便秘になりやすくなります。便秘は腐敗物が溜まった状態ですが、これが長時間続くと腐敗物からアンモニアやアミンなど大量の有害物質が発生するようになります。
このように腸内環境の乱れは多くの有害物質を発生させ、肝臓の負担を非常に大きくするのです。また腸内環境の乱れは長期化しやすいので、肝臓の負担を長引かせ肝機能が弱くなる原因となります。
ヨーグルトは腸内環境の乱れを改善して肝臓の負担を軽減する
ヨーグルトはご存知の通り、腸内環境の乱れを改善する効果があります(詳細はこちら「ヨーグルトの腸内環境改善効果」を参照ください。
特に悪玉菌を排除するのに有効ですので、直接肝臓の負担を軽減するのに役立ちます。また、便秘を予防・改善することから有害物質の発生を抑制することも肝臓の負担を減らします。
このように有害物質の発生を抑制し、肝臓の負担を軽減することが、ヨーグルトに肝機能の改善や肝臓病予防効果があるという最大の理由となっています。
2.コレステロールを低下させ、脂肪肝のリスクを低減する
一部のヨーグルトにはコレステロールを低下させる効能があり、それが肝機能を改善し、また脂肪肝のリスクを低減できる可能性があります。
既述の通り、肝臓は余った脂肪分や糖分を中性脂肪やコレステロールに変えて不足した時のために貯蔵しておくことができます。
しかし、現代の食生活では脂肪分や糖分は不足するどころか過剰に摂取しすぎる状態です。そうなると肝臓に中性脂肪やコレステロールがどんどん溜まり、それが肝機能を弱め、酷い場合は脂肪肝という病気になります。
そのため、肝臓の負担を軽減するためにも体内に摂り込まれる脂肪分や糖分を減らす必要があります。そこがヨーグルトに肝機能改善・肝臓病予防効果があるという一つの要因となっています。
ヨーグルトにはコレステロールを抑制する効能があります。ヨーグルトに含まれる乳酸菌は腸内でコレステロールを消費したり、コレステロールに吸着してそのまま体外へ排出することでコレステロールの吸収を抑制する効果があります(詳細はこちら「ヨーグルトのコレステロール値を下げる効果」を参照ください)。
つまりヨーグルトはコレステロールの吸収を抑制し、肝臓の負担を軽減することで肝機能を改善したり、コレステロールの蓄積を減らすことで脂肪肝という肝臓病を予防する効果が期待できるのです。
ただし、多くのヨーグルトには脂肪分や糖分が含まれています。これらのヨーグルトはかえって肝臓の負担を高める可能性がありますので、肝臓の健康のためには極力脂肪分や糖分がふくまれていないヨーグルトを選びましょう。
また、最適なのは「豆乳ヨーグルト」です。豆乳ヨーグルトに含まれる大豆たんぱく質は強力なコレステロール低下作用があります。乳酸菌と大豆たんぱく質の相乗効果により高い肝機能改善および肝臓病予防効果が期待できます。
豆乳ヨーグルトのコレステロール抑制効果はトクホ(特定保健用食品)の許可を受けているものもあるほどですので信頼性の高いものと考えられます。
3.肝臓の健康を保つ栄養分を供給する
肝臓を健康に保つには普段から良質のたんぱく質やビタミンが必要になります。
この点でもヨーグルトには大きなメリットがあります。ヨーグルトには良質の各種ビタミンやたんぱく質がバランスよく豊富に含まれています。
さらに乳酸菌の働きでそれらのビタミンやたんぱく質が体内に吸収されやすい形になっているのです。
肝臓は元々再生能力が高く丈夫な臓器と言われていますが、その前提は肝臓を健康に保つ栄養成分が摂取できていることです。
ヨーグルトは肝機能改善や肝臓病予防効果の大前提となる肝臓の健康を保つ効能があると言えます。
肝機能改善・肝臓病予防に効果的なヨーグルトの選び方
前段の内容から分かるように肝臓に効果的なヨーグルトの要素は「腸内環境を改善する」「コレステロールを低下させる」「良質なビタミン・たんぱく質を含む」ことにあります。
この要素を全て兼ね備えているのが「豆乳ヨーグルト」です。豆乳ヨーグルトは肝機能改善・肝臓病予防に最も効果的なヨーグルトと言えるでしょう。
もし豆乳ヨーグルトが苦手という場合は、牛乳ヨーグルトでも大丈夫ですが、脂質や糖質は肝臓に悪影響を及ぼしますので、少なくとも脂質や糖質が入っていないヨーグルトを食べるようにしましょう。
肝機能改善、肝臓病予防に効くヨーグルト
殆どのヨーグルトが腸内環境の乱れを改善する効能があるので、すべてのヨーグルトが肝臓に効果と言えるのですが、ここでは、それとは違ったアプローチでヨーグルトをご紹介いたします。
乳酸菌の中には直接的に肝機能改善や肝臓病予防に作用するものがあり、それらは具体的に研究論文で報告されています。
それらの乳酸菌を含むヨーグルトをご紹介しようと思いますが、ご紹介するヨーグルト自体は肝機能改善や肝臓病予防効果に言及していませんので効果が期待できるか分かりません。もしより効果性を求めるのであればご紹介する乳酸菌のサプリメント等を摂るのが良いと思われます。
肝臓に効果的な乳酸菌は次の2つです。
SBL88
SBL88はサッポロビールが開発した乳酸菌で正式には「ラクトバチルス・ブレビス SBC8803(Lactobacillus brevis SBC8803株)」と言います。SBL88はビール会社らしく大麦に由来する植物性乳酸菌です。
SBL88は実験の結果、γ‐GTPと肝臓内の中性脂肪の値を下げることが確認されています。γ‐GTPとは肝機能の一つである解毒作用に関する酵素で、γ‐GTPの値が高いと肝機能が弱っており、脂肪肝のリスクが高まると言われます。
SBL88は肝臓内の脂質代謝を促進し、さらに肝機能を弱らせる酸化ストレスを軽減する作用があると考えられており、それがγ‐GTPや中性脂肪の値を下げていると言われます。
ビールはγ‐GTPの値を上げ、脂肪肝などの肝臓病のリスクを高める飲み物ですが、不思議なことにビールの原料である大麦から発見されたこのSBL88はγ‐GTPの値を下げることで肝機能を改善し、脂肪肝などの肝臓病のリスクを軽減する効果があるのです。
SBL88乳酸菌を含むヨーグルト
からだにぜいたくヨーグルト 安曇野食品工房
ファカリスFK-23
ファカリスFK-23はニチニチ製薬が開発した乳酸菌で正式名をエンテロコッカス・フェカリスFK-23(Enterococcus faecalis FK-23)と言います。
ファカリスFK-23はC型肝炎に効果的な乳酸菌で治療剤としての特許も取得しています。
フェカリスFK-23はインターフェロンを作り出す作用があるとされ、それによるC型肝炎改善効果が確認されています。
インターフェロンはC型肝炎の治療に使われる薬剤ですが、副作用があったり体力が無いと使用することができません。しかし、フェカリスFK-23は体内でインターフェロンを作り出すために副作用もなく、体力な無い人でも使用できます。
このフェカリスFK-23の肝臓に対する効能はインターフェロンによるものということは、これまでご説明した乳酸菌のアプローチとは全く違い、免疫力を向上させる効能と言えます。
ファカリスFK-23はニチニチ製薬が販売している「プロテサン」シリーズのサプリメントや伊藤園から発売されている乳酸菌飲料水「朝のYOO」などに含まれています。
ファカリスFK-23乳酸菌を含むヨーグルト
朝のYoo フェカリス菌1000 伊藤園
※本製品は厳密にはヨーグルトでなく乳酸菌飲料です。
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